INTERVIEW 沖縄県民を支える卸売業界。【安心して働ける環境づくり】に奮闘する人々の想いを取材しました。

2019年01月28日
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2018年3月18日、沖縄県にまた一つ、新しい道が開通した。まるで海の上をドライブしているような気分が味わえる「西海岸関連道路」がそれ。この道路は浦添市西洲(いりじま)と宜野湾市宇地泊を結ぶもので、那覇空港へのアクセスに利用する方も少なくないのではないだろうか。道路の南側に位置する西洲には沖縄県卸商業団地があり、ここで働く人々の存在が、県民の生活に大きく関わっていることを多くの人は知らない。今回の特集記事では普段の生活では知る機会のない『卸売』という業界に関して、歴史・事業内容・各社の取り組みから魅力を紐解いていきたい。

取材協力: ・株式会社池原商事 代表取締役社長 池原 一則 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 理事長) ・株式会社マルキン海産 代表取締役社長 金城 裕治 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 副理事長) ・株式会社マルキン海産 総務部 業務企画課 嘉数 裕樹 氏 ・株式会社金城商事 代表取締役社長 金城 光成 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 理事) ・金城商事グループ 株式会社AKトランスポート 総務・経理 大城 真理乃 氏 ・大伸株式会社 代表取締役社長 赤嶺 克俊 氏 ・沖縄県卸商業団地協同組合 専務理事 照屋 功 氏  

私たちが知らない、卸売という仕事と組合の歴史

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提供:那覇港管理組合

私たちがスーパーで買う食品や、レストラン・ホテルで楽しむ料理に使用される食材などは、食品卸売業を営む企業が納めていることがほとんど。メーカーから仕入れ、小売業に納品し、販売する。その中間流通を担うため、一般消費者と直接関わる機会はまずありません。しかし、安心・安全な“食”の流通を望む消費者のニーズが満たされるためには、商品を作る側とそれを販売する側、この両者をよく知るパイプ役となる卸売業の存在がとても大きいのです。沖縄県卸商業団地の歴史は、昭和58年に遡ります。当時、那覇市松山にあった若松問屋街の卸売業者をはじめ、主に那覇市内に点在していた問屋が集まって、卸売業の機能強化のために組合が結成されました。平成元年から3年にかけて、浦添市西洲に卸団地を建設、移転後の営業を開始しました。現在は、組合員51社、準組合員18社の計69社で構成され、その従業員は4,000名規模にもなります。 沖縄県の生活においてなくてはならない業界の一つであることもあり、卸売業界には明るい話題も多く、好循環のビジネスモデルであるとも言えます。県内人口は増加傾向にあり、国内外からの観光客数も伸び続け、さらにリゾートホテルの建設も相次ぐ。そうしたさらなるビジネスチャンスの到来に備えて、食品卸売業では若手の人材を切望する声が上がっています。 しかし、いわゆるブルーカラーの印象が強くあり、人材確保は困難を極めています。そんな中で、今日、若手の人材を採用したいと声を上げている企業の多くが、そのようなイメージを払拭すべく、ITの積極導入や商品・サービスにおける付加価値の創造と提案、自社ブランドの育成など、従来とは違う新たな挑戦を始めています。スムーズな物流の実現、ひいては沖縄県経済の活性化のために、大きな役割を担う卸売業。各社の取り組みをご紹介する中で、魅力ある業界であることを知っていただくきっかけになれば嬉しいです。

 【今までのイメージと違う!卸売業 その1】

社員の満足度の向上に努めること。それが、業界の未来を創る。

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株式会社池原商事 代表取締役社長 池原 一則 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 理事長) 卸団地誕生の歴史についてもお話してくださった池原社長。「今までの当たり前を、私たちなりに変革して『共に働き、楽しくなる会社を目指そう!』と思っています。」利益だけにとらわれない新たな取り組みを続ける。
私たちは、主にリゾートホテルが主要な販売先となっており、米や小麦粉などの主食を始め、食品だけではなく洗剤や雑貨に至るまで幅広く扱っている会社です。私たちが止まれば、県内の中でも大きな割合を占める観光産業が止まってしまうと言っても過言ではありません。広く言えば、沖縄経済を支えている大切な企業であると自負しています。ただ、卸売業界は人材不足です。大手量販店が続々とオープンする来年の夏には、ますます採用が厳しくなるかもしれないと非常に危惧しています。組合の理事長である私は、人材確保の一策として、「休暇に関する福利厚生制度の充実を図ってはどうか?」と、組合員企業に提案しています。 例えば、当社では、2019年1月よりバースデー休暇を導入。誕生月の好きなときに休みをとることができます。さらにその他にも、土日を休日にすることにし、取引先に配る当社の営業日カレンダーにも明記しています。この業界では平日を休日にするのが通例ですが、企業利益よりも社員のメリットを優先しました。土日を休みにすることで、社員たちが子供の学校行事に参加しやすくなるというのがその狙いです。その他にも、『安心して働ける』と思ってもらうことにも繋がると感じ、賞与支給日をあらかじめ決定・告知する。新年会やボウリング大会、焼き肉大会など、折に触れてイベントを開催しますが、その際は交通費・運転代行費まですべて用意する。 他の業界の当たり前が、当たり前ではない業界だけれど、私たちなりに変革をして行きたいと考えています。   %e6%b1%a0%e5%8e%9f2 仕事面においても、モチベーションアップにつながる施策を講じています。県外で開催される食品展示会などに社員を連れて行った際、県内ではなかなか出会えない料理などを自分の目で見て味わうことで、食の深さを学んでもらっています。自分たちが扱う商品は食品が主体ですから、見聞を広めることが仕事にも活かされるわけです。 最近、新たに導入したキャリアアップの仕組みは、チームリーダー候補を募る際、社員自ら手を挙げてもらうというものです。選ばれた人は提示された目標や課題をクリアすれば、さらなるステップへ。2018年中には二人の社員が手を挙げてくれ、なかなか頼もしく思います。 「共に働き、楽しくなる会社を目指そう!」それが私の願いです。  

【今までのイメージと違う!卸売業 その2】

風通しが良いのは当たり前!フレッシュな意見と挑戦が自社と業界を強くする。

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株式会社マルキン海産 代表取締役社長 金城 裕治 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 副理事長) 「社員たちの発想力は、私たちには及びもつかないとさえ思うこともあります。」社長が社員をリスペクト。トップダウンだけではない組織への変革の現れである。
マルキン海産の主力商品「モズキッズ」は、2001年の販売開始以来、おかげさまで県内すべての量販店で取り扱われ、他に類を見ない人気商品となっています。今でこそ、県民の皆様にはお馴染みなテレビCMでしたが、当時の社長(現会長)からは、「モズクにCM?」と半ば呆れられつつも、結果、商品の知名度がぐんと高まり、売り上げも急速に伸びていきました。現在では、1日当たり1万9000食ほどの生産量を誇ります。 来年度は再び、テレビCMなどを活用して、商品と企業イメージの訴求につなげたいと考えています。こうした自社ブランドの育成は、これからの食品卸売業を強くしてくれるものと信じています。その主戦力として、社内では職種の垣根を越えて集結した30代の社員たちが、マーケティングを中心にさまざまな課題の解決に取り組んでいます。その発想力は、私たちには及びもつかないとさえ思うこともあります。本人が望めば、いろいろな資格取得を応援する制度があります。入社一年目のある社員は作業の効率化を図るうえで、倉庫のレイアウトを改善しました。しかもそのためにと、フォークリフトの免許まで取得したのには驚嘆しました。 その一方で、60代の嘱託社員もパワフルに働いています。経営者として一番辛いのは、社員が働きすぎで不健康になること。元気で長く働き続けられる職場環境であり続けるとともに、休暇取得や定時退社を推奨して家庭を大事にしてほしいと願っています。   %e3%83%9e%e3%83%ab%e3%82%ad%e3%83%b32  
株式会社マルキン海産 総務部 業務企画課 嘉数 裕樹 氏
私は、内地にある同業他社でシステム関連の仕事をしていましたが、沖縄に帰ってきてマルキン海産の工場でアルバイトをすることに。短期間のつもりが、温かみのある社風に魅かれて正社員になっていました(笑)。 まだ入社一年目の私ですが、会社のバックアップを受けて様々な資格取得にチャレンジしています。作業の効率化を図るうえで、倉庫のレイアウトを改善したい、そのためにはフォークリフトの資格が必要だと思ったので、直談判し、こちらも会社のバックアップを受けて、取得することができました。勉強したいと望めば、なんでもやらせてくれる。定時退社を善しとする文化もありがたく、プライベートも充実させるところにも心配りがあります。入社する前の業界イメージとは違い、『企業利益だけじゃなく、社員の人生までも考えてくれる会社』であると思っています。  

【今までのイメージと違う!卸売業 その3】

なぜ働くのか。個々人のキャリアを大事にする会社・業界へ。

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株式会社金城商事 代表取締役社長 金城 光成 氏(沖縄県卸商業団地協同組合 理事) 「社員が自分の周囲に就職先として金城商事を勧められる。そんな企業でありたい。」社員が誇れる会社創りのために個々人と向き合う。
当社は、取り扱い品目が非常に多いのが特徴です。中でも、牛用・豚用・鶏用の飼料を取り扱っているので、畜産農家とつながりがあります。そこから新鮮な肉や鶏卵の仕入れができるばかりでなく、それらを外食産業や製パン・菓子メーカーに卸すこともできるからです。単純に商品を卸せばいいというものではなく、お客様のニーズに細かく対応する力が求められます。例えば、病院食に使われる鶏肉なら、1人当たり60グラムずつカットして提供する。調理現場だって人手が足りませんから、少しでも時短につながる商品を考えて提供します。各メーカーから講師を招いて製パンや製麺の勉強会をコーディネートしたり、内地で流行っているグルメ情報を沖縄で紹介するといった活動も行い、お客様が抱える課題を一緒に解決していけるように、心がけています。 私が、社長就任の際にまず考えたのは、『働く意義を大事にする会社にしたい』ということ。働くということは、給料さえあればいいというわけでなく、社員が“自分のキャリアビジョンを描ける”、“会社に来るのが楽しくなる”、そういったモチベーションが不可欠だからです。多種多様な社員のニーズに応えるために、個々人と向き合いたいと思っています。そうした動機づけの一環として、会社の公式行事も様々に開催しています。新年会に始まり、夏のバーベキュー、NAHAマラソンやトリムマラソンへ参加する社員をみんなで応援する企画など。 社員が自分の周囲に就職先として金城商事を勧められる。そんな企業でありたいと思っています。   %e9%87%91%e5%9f%8e2  
金城商事グループ 株式会社AKトランスポート 総務・経理 大城 真理乃 氏
金城光成社長による新卒採用組の1期生です。専門学校で簿記を学んだ私は、事務職に就きたいと考えつつも、アクティブな仕事にも憧れていました。 AKトランスポートに就職したのは、その両方を満たせる職場だったからです。普段は総務・経理のデスクワーク業務をしますが、いざというときはハイエースに乗って小さな荷物を届けたりすることも。社内の雰囲気はアットホームで楽しく、みんなとコミュニケーションを取りながら働ける環境です。今では、就職活動のあの時、「少しだけ自分の理想に対して貪欲になって良かった!」と思っています。  

【今までのイメージと違う!卸売業 その4】

ITを取り入れて効率化。アイデアと自分次第で面白くできる業界。

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大伸株式会社 代表取締役社長 赤嶺 克俊 氏 ITの導入による業務の効率化は、それが潮流だからではなく社員に「充実したライフスタイルを送って欲しい」から。
弊社は、冷凍食品や生鮮食品を主力商品に扱っており、スーパー、小売店、ホテル、レストラン、居酒屋及び飲食店全般、学校・病院・企業給食を通して、県民の皆さんに食品をお届けしています。 40歳で社長に就任して以来、積極的に業務のIT化に取り組んでいます。現在、社内で活用しているのは、クラウドコンピューティングサービス『Salesforce(セールスフォース)』と『EVERNOTE(エバーノート)』です。導入当初は社員たちに煙たがられましたが、今では情報共有に不可欠のツール。現場のスタッフはタッチパネルを難なく使いこなして業務を行っています。少し詳細にお話しすると、ルートセールス担当が発行した受注伝票を元に経理担当がデータを入力すると、同時に、そのデータが倉庫や加工場に届く仕組みです。「ステーキ肉は厚さ2センチにカット」「しゃぶしゃぶ肉は厚さ2ミリにスライス」といった情報をスピーディーかつ正確に加工場に伝えることができるようになりました。 このように仕事の効率化を図ることで、社員には早く帰宅して欲しいと考えています。家族と過ごす、デートを楽しむ、自己啓発に時間を費やす、といった充実したライフスタイルを送って欲しいのです。   %e5%a4%a7%e4%bc%b82 現在、わが社は安定戦略期だと位置づけ、あえて急激な成長を目指していません。今は、地固めをして人材を育てる期間。これまでの業界では、もしかしたら”人材を育てる”という考えすらなかったかもしれません。ただ、これからは実力の業績が大切です。お客様から信頼されて「大伸と取引したい」と言われる状態こそ、実力の実績だと考えています。 今日、卸売業の使命は、単に食材を配送するだけに止まらず、味付け・切り身・ボイルといった商品のバリエーションを編み出したり、付加価値のある商品を考えることにあるのではないでしょうか。「好きだけど食べにくい」「買いたいけど量が多すぎる」というお客様目線で考えると、新たな商品企画のアイデアが生まれます。たとえば、生食用の冷凍の牡蠣・高級エビ・アワビが1㎏単位の商品で扱いにくい、手を出しづらい商品だとしたら、それを小分けのセットにして“シーフードプレミアム”などと銘打ってお客様に提案すると面白いんじゃないかな。 その他にも、沖縄県内のリゾートホテルの食事には県産魚のニーズが高いのですが、沖縄県は台風が多くて安定供給は難しい。そこで当社では、アルコール凍結技術を導入し、生食用の県産魚を提供できるようにしました。すると、ホテルでは食事のメニューに「県産品」と取り入れることができるため、大変喜ばれています。 従来は力仕事というイメージが強かったこの業界は、自ら考えて行動する人、提案する力を身に付けたい人にとっては、限りなくクリエイティブな仕事だと言えるのではないでしょうか。  

【今までのイメージと違う!卸売業 番外編】

『安心・安全な食品を卸す』業界でみんなが安心して働ける毎日を。

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沖縄県卸商業団地協同組合 専務理事 照屋 功 氏
私たち組合事務局は、組合員企業の活動を側面から支えるのが任務です。組合は行政機関と組合員のパイプ役も担っており、西海岸関連道路の建設時も、数年間にわたって、行政に対して早期開通の要請活動を続けました。その結果、道路の開通は当初の予定より3年ほど早くなったんです。現在、卸団地で営業している組合員企業のために、我々ができることに尽力していきたいと常に考えています。その例が、人材不足解消の一策として行った、企業主導型保育所の案内など。もし、卸売業が止まったら、食べ物や日用品もすべてストップします。卸売業は、特に沖縄県では、県民の生活を根底から支えている仕事なのです。 今回、多くの組合企業様の中から才知きらめく4社の食品卸売業からのメッセージを紹介させていただきました。従来のイメージだけではなく、今あるリアルな情報を皆さんにお伝えできたのではないかと考えています。是非一度、お話を聞きに来てください。  
身体が資本。 どんな業界でもそれは言えるけれど、ブルーカラーの業界では、そのイメージが更に強い。そして、長く働くイメージがつきにくいのも現状。しかし、そんな私たちの固定観念が“天職”との出会いを妨げてしまうこともあるだろう。 今、さらなる変革を遂げようとしている卸売業界。 その魅力はこの記事のたった6000字弱だけでは、到底伝えきれない。ぜひ、その目で直接確かめてみてはどうだろうか。  

▼「豊かで楽しい“食”の世界を提供」を目指し、先進的な取り組みを続けている大伸株式会社の求人情報

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